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ベンチャーとヒトについての仕組みづくり

2018年11月05日

コンピテンシーコンサルティング株式会社 専務執行役員 原 幸三

政府は、2018年6月15日に「未来投資戦略2018」を閣議決定しました。「未来投資戦略2018」では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの技術革新を取り込みながら、イノベーションの担い手であるベンチャーに対して政策リソースを重点的に配分することに言及しています。起業家、ベンチャー経営者にとってみれば、アベノミクス以降のベンチャーを後押しする機運が継続する明るい材料の一つと言えるでしょう。日本では1970年代の第1次、80年代の第2次、90年代の第3次を経て、現在は第4のベンチャーブームとされていて、スタートアップ企業への投資は高い水準を維持していますが、一般的にベンチャーの生存確率は起業5年で30~50%といわれており、チャレンジした起業家が、政府が目指す「世界で勝つことのできるベンチャー」に脱皮するべく成長を継続していくにはまだまだハードルは高いのではないでしょうか。

 

忘れてはならない経営資源=「人」


綿密な事業計画、戦略策定、資金調達などはベンチャーの成長にとっていずれも重要な要素であるのは間違いありませんし、直接的に財務的な成果にもつながりやすいため経営者は重視しがちです。ただ、緻密で精巧な計画や戦略を策定してもそれを実行するのは最終的には「ヒト」です。筆者はベンチャーでのマネジメント経験を経て、現在は経営・人事領域のコンサルティングに従事していますが、経営者と従業員のつながりが強く、小回りが利いて意思決定のスピード早いベンチャーの強みを200%活かすには、「ヒト」の成長を促し活躍できるしくみを整備し企業としての基礎体力を高めることが、結果として組織としてのベンチャーの成長力と成長スピードを高めることにつながると考えています。

 

成長に合わせた「人」を生かす「しくみ」


起業したベンチャー企業は、スタートアップ期、急成長期、安定成長期という成長ステージをたどるといわれており、それらの各ステージでは「ヒト」に関する課題も特徴的です。特に急成長期は、事業の拡大に伴って従業員が急激に増加し、それによりヒトに関する問題が最も顕在化するステージとなります。新たに参画する様々な経歴や想いを持つ従業員の向かうべき方向をそろえ、組織や従業員の役割を明確化していく。スタートアップ期に行ってきた、個々の従業員と濃密に向き合いながらの組織運営から、「しくみ」としての組織運営を整備する段階となります。「ヒト」について考え方を整理し、等級・評価・報酬制度を体系的に整備することで、従業員と組織のより高い成長につなげることができるステージであり、この時期にタイムリーに「ヒト」に関する取り組みをできるかが、その後の組織の成長を大きく左右します。

 

まとめ


社内体制の整備、仕組みの整備はこれまではIPOをきっかけとして取り組む会社が多かったかと思います。筆者が過去に在籍していたベンチャーでも上場をターゲットに社内マネジメント体制の整備を行っていました。昨今は上場を急がないベンチャーも増加傾向ですが、早い段階から中長期的なヒトの課題に取り組み始めることが出来れば、準備期間を長く確保し、じっくりと腰を据えて、より組織にフィットする仕組みを整えることも可能となります。

近年の働き方改革への関心の高まりもあって、経営者、従業員双方の「ヒト」領域への関心は高まっています。上場前のより早い段階から経営者と従業員の間で「ヒト」に関しての課題を議論しながら、自分たちにフィットする仕組みを整備し従業員と組織の成長基盤を整えることができれば、スピード感を持ってグローバルに価値を創造できるベンチャーを創出につながる大きな要因になるのではないかと考えています。

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