R社では管理職の存在意義が不明確で、彼らの目標設定もノルマ管理が中心となっており、具体的に何をすれば良いかという観点が抜けていた。そのため、部下にも数値目標以外の明確な目標を提示することができず、育成も思うようにいっていなかった。
このような状態が長年続いていたため、数値目標(売上、コスト、利益)と人材育成の両方を実現できるバランスの良い目標を立てることが出来るように、弊社の目標管理研修を行った。
単に目標管理制度について学ぶのではなく、どうして目標管理が必要なのか、また、どんな上司が優秀で、その上司に近づくためにどのような目標を立てれば良いかなどを、自身の日常業務を振り返りながら身につけられるようにした。
本コラムでは、研修の中でも特に受講者に支持され重要なポイントとなった「目標管理と施策の整合性」「五分五分の確率での目標設定」「戦略マップの活用」「部下の目標・評価基準のレビューとフィードバック」について述べてゆきたい。
① 目標管理と施策の整合性
「目標管理制度(MBO)」には、以下の2つの側面がある。
・主に上から下 ・・・目標のブレークダウンと業績のモニタリング
・主に下から上 ・・・部下の自主性・創意工夫の引き出し
目標管理は、上から下へ一方通行で目標を与えるノルマ管理ではなく、目標のブレークダウンをする際、上司と部下が「目標を共有」し、部下が自らの目標を立て仕事を管理(セルフコントロール)する経営手法である。重要な点は、上司が仕事のやり方について細かく指示・命令するのではなく、部下の自主性・創意工夫を引き出しながら目標を達成する方がより効果的という事である。
全社戦略と個人の目標の整合性を保つことで、戦略を効果的に遂行することが可能になる。ブレークダウンされた目標設定によって、自分がどのように会社の成功に貢献できるかを理解できる。
② 五分五分の確立での目標設定
また、管理職は「五分五分の確率」で達成可能な目標を立てる必要がある。自組織が背伸びしてようやく届く目標と、それを達成するための具体的な施策を考え、部下に示す。部下がその施策の成功確率を五分五分と受け止めたとき、組織の意欲を最も引き出すことができるとマクレランド等の研究により実証されている。
会社の風土や部署によっては、簡単に達成できる目標や反対に到底達成出来そうにない現実感の無い目標を立てがちであるが、それでは部下の達成に向けての意欲は高まらない。出来るか出来ないかがの見通しが五分五分であるかに注意して、目標設定を行う必要がある。
③ 戦略マップの活用
目標管理制度導入後の目標に戦略マップを活用することで、財務目標を含めた抜け漏れのない目標を設定でき、目標の質を高めることができる。
戦略マップには、以下の視点が含まれる。
・財務の視点:利益増のための売上増とコスト削減。
・顧客の視点:独自の価値提供により顧客を満足させ、自社への忠誠心(Loyalty)を高める。
・社内プロセスの視点:価値提供する上で社内のプロセスに卓越する。
・学習と成長の視点:価値提供を実行する社員が必要なスキル・知識等を持つ。
それぞれの施策の相互関係を明確にする「ストーリー」を意識して作ることで、部下・関係者への説得力が増す。
④ 部下の目標・評価基準のレビューとフィードバック
部下の目標と評価基準のレビューとして、部下の中からひとりを選んで、彼らの目標管理シートや実施計画等を確認してもらい「顧客」、「社内プロセス」、「育成」の視点で以下のフォーマットにまとめてもった。
上手くいっている点(強み)と上手くいっていない点(弱み)に分類し、部下にフィードバックする際のフレームワークとして以下の表を紹介した。
また、評価の納得感は日常のフィードバックで決まると言っても過言ではない。良いフィードバックであればすぐに、悪いフォードバックでは時期と場所を選ぶなど、フィードバック内容に応じて、適切におこなうことが重要である。
また、評価の時期になって必死になって思い出すということがないように、最低月に一度は部下の取り組みを記録に残すことも日常業務の中で忘れないようにしたい。
【研修後の管理職の感想】
以下は、弊社目標管理研修を受講した管理職の研修を抜粋したものである。
今回の目標管理研修を受けて、評価基準設定の難しさや、タイムリーなフィードバックの重要性について再確認することができました。また、多面的な目標設定の仕方などの新しい視点で部下の育成ができそうだと感じました。バランスの良い目標設定が出来るよう心掛けたいと思います。(男性・部長)
目標管理は、一方的な自分の思いだけでは部下に伝わらない事が身にしみて理解できました。本日の研修を受けて、自分のフィードバックのやり方では部下の育成につながらない点があった事が分かりました。(女性・課長)
戦略マップの策定の仕方など、具体的な方法が明確になったとても有意義な研修でした。目標管理の重要性を再認識しましたし、日々の業務に即役立つ内容であったのも印象的でした。(男性・部長)
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