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在宅勤務(テレワーク)を導入する前に知っておきたいこと

2016年12月7日

「在宅勤務(テレワーク)」と聞くと皆さんはどの様なイメージを持つでしょうか?小さな子供がいる女性のための働き方でしょうか?

確かに「在宅勤務」は、そのような事情をかかえる人の支援を目的に導入されることが多かった制度ですが、最近では育児などの事情をかかえる女性に限らず、多くの人が利用できる制度を導入する企業も出てきています。

政府も在宅勤務(テレワーク)を積極的に推進しており、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の是正などと並んで「働き方改革」のテーマの一つになっています。

今回のコラムでは、これから在宅勤務を導入しようと検討している企業の方が、この働き方を導入する前に知っておきたいことをご紹介します。

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在宅勤務≒テレワーク


最初に用語を確認します。「在宅勤務」と「テレワーク」はほぼ同じ意味合いで使われることが多いのですが、正確には区別が必要です。テレワークとは「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと(日本テレワーク協会による定義)」であり、在宅勤務はテレワークの一つの形です。

在宅勤務は、会社のオフィスに出社せず自宅で仕事をする働き方ですが、テレワークには在宅勤務以外の働き方もあります。勤務先以外のオフィススペースで働く「サテライトオフィス勤務」、主に営業を担当する社員が社外で働く「モバイルワーク」です。

営業担当の方などがパソコンやタブレット、スマートフォンを持ち、顧客訪問の合間にカフェでメールの確認をするというのもテレワークに該当します。

この様にテレワークと一言でいってもいろいろな働き方があるのですが、その中で注目度が高まってきているのが在宅勤務です。日本では少子高齢化による労働力不足が懸念されます。自宅にいながら仕事ができるのであれば、育児や介護が理由でこれまで仕事に就くことができなかった人の就労機会を確保することができると期待されています。

 

在宅勤務を導入しやすい環境は整ってきたが、普及はこれから


政府が積極的に推進をしている在宅勤務(テレワーク)ですが、現時点では多くの企業で導入されているとはいえない状況です。

先月末に関東地方で初雪が観測され、電車などの公共交通機関に遅れなどの影響も出てました。在宅勤務の普及が進んでいないと強く感じるのは、この様な雪や台風などの日です。

雪などで公共交通機関に遅れが発生するとニュースでは駅の様子を放送します。その場面で映されてることが多いのが、かなり混雑が予想されるにもかかわらず駅にたくさんの人が駅に詰めかける姿です。

駅で入場規制がかかり、電車の大幅な遅延も見込まれる状況です。会社のオフィスに行くまでに普段の何倍もの時間がかかることは確実です。代わりに自宅で仕事をするという発想があってもよいと思いますが、多くの人は普段通りオフィスに行って仕事をしようとします。

IT技術の進歩で、自宅など会社のオフィス以外の場所で仕事ができる環境を整備するのが簡単になっているのにもかかわらずです。

在宅勤務の普及を進めようとする動きはずいぶんと前からありました。今から15年以上の前の2001年、政府が掲げた「e-Japan戦略」では目指すべき社会の中にテレワークという言葉があります。2000年頃といえば低速なダイヤルアップ接続が主流でした。その頃であればネットワークなどハード面の問題のため普及は困難であったといえたでしょう。

現在ではいつでもどこでも高速インターネットに接続をできる時代になりました。IT技術の進歩に加え、政府の後押しもある在宅勤務ですが、なぜなかなか普及しないのでしょうか?

 

在宅勤務が普及しない理由とは?


在宅勤務が普及しない理由としては、情報漏洩に対する懸念、労務管理や人事評価の問題、在宅勤務に適した仕事がないこと、社員から在宅勤務をしたいという声がないことなど様々考えられます。

その他、企業における個別の事情も考える必要があります。現場で働く必要のある職種が多い工場などがある企業では、そもそも在宅勤務を導入できる人は限られます。

この様に理由は様々あげられますが、私は在宅勤務が普及しない理由は、この働き方に対する思い込み、特に生産性に関するものが大きいと考えています。

在宅勤務をすると生産性に影響がある(生産性が低下する)

企業が在宅勤務を導入しないよくある理由の一つは、在宅勤務は生産性の低下につながるのではないかという懸念です。自宅で他の人のいないところだと、仕事をサボってしまうのではないかという考える人は多いと思います。

この懸念とは反対に、在宅勤務をすることで生産性が向上したというアンケート結果(平成27年度情報通信白書)も目にします。自宅の方が集中して仕事を進められるなどがその理由となっています。

在宅勤務は生産性の低下につながる働き方なのか。それとも向上につながる働き方なのか。私はこのように考え方ること自体が誤っていると思います。

人によって集中できる場所というのは異なります。静かな場所が良いという人もいれば、ある程度うるさい場所の方が良いという人もいます。これ加えて、個人の住宅環境も考慮する必要があります。ワンルームマンションに住んでいる人と、戸建てで静かに仕事ができる部屋がある人では、後者の方が仕事に集中しやすいはずです。

つまり、在宅勤務だから生産性が低下する、向上するという見方をするのではなく、在宅勤務に向いている人もいれば、そうでいない人もいると考えた方がいいのではないでしょうか。

企業が在宅勤務を導入したからといって、全員が在宅勤務をするというわけではありません。自宅だと集中できない人が無理に在宅勤務をする必要はないし、実際にすべきではないでしょう。自宅でも仕事のパフォーマンスが落ちないという自覚がある人だけが、在宅勤務をするのであれば生産性の低下という問題は起こらないはずです。

日本の企業ではチームで仕事を進めることが多いから、在宅勤務では生産性が低下するという意見もよく聞きます。

確かに、チームで進める仕事をいきなり分割して自宅で行おうすれば、仕事の効率は落ちるのは当然です。書類は一か所に保管、対面での打ちあわせを頻繁に行うといった同じ場所で仕事をするのが当たりの環境で、一人だけ在宅勤務をしようとしても困難です。もしできたとしても会社にいる時と同じように仕事を進めらないでしょう。この状態であれば確かに生産性は低下します。

在宅勤務を導入するのであれば、それに適した環境の構築が必要です。書類の電子化を進め、どこにいてもアクセスができるようにしておくこと。一から十まで上司の指示を仰ぐのではなく、個人が自主性を持って仕事を進められるようになることなどが欠かせません。

生産性が低下したという場合、在宅勤務という働き方自体が悪いということではなく、在宅勤務を導入したにもかかわらず、同じ場所で仕事をすることが当たり前の働き方を見直さなかったことの方を問題にすべきではないでしょうか。

 

まとめ


在宅勤務は、会社のオフィスに出社せず自宅で仕事をする働き方であり、テレワークの一つの形です。少子高齢化による労働力不足などが懸念される中、自宅で仕事をすることができる在宅勤務への期待が高まっています。

しかし、在宅勤務を導入しているのは一部の企業に限られます。IT技術の進歩に加え、政府の後押しもあるなど、導入をしやすい環境が整ってきているにもかかわらず普及は進んでいません。

その理由の一つとして、在宅勤務をすると生産性が低下するという思い込みがあることが考えられます。自宅で仕事に集中できるかできないかは人それぞれです。在宅勤務に向いている人もいれば、そうでいない人もいる。そうではない人だから生産性が低下したと考えるべきではないでしょうか。

チームで進める仕事が多いから在宅勤務では生産性が低下するという意見もありますが、在宅勤務という働き方自体が悪いということではありません。在宅勤務を導入したにもかかわらず、同じ場所で仕事をすることが当たり前の働き方を見直さなければ、生産性が低下するのは当然といえるでしょう。

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