本コラムでは、「役割」に基づく等級・評価・報酬・育成等の仕組み(役割等級制度)の特徴を数回にわけて解説をします。初回となる今回は「役割等級制度の特徴」についてです。
役割等級制度とは、「等級毎に会社が定めた役割をもとに社員を格付けし、期首にその役割にふさわしい目標を定め、期中に日々の業務を通してフィードバックし、期末に成果を評価し処遇を決める仕組み」です。
■役割等級制度の全体像
役割等級制度を導入している企業により具体的な中身は様々ですが、一般的な特徴は以下となります。
・役割等級は、日本独自の制度です。
・導入の目的は、公正な処遇を中心にしている会社が多いですが、人材育成という観点もあります。
・等級の数は、非管理職で3~4個、役員前までの管理職で3~4個が多い。等級間で役割の差を明確にするため、等級の数は少なめです。
・会社が求める職責(職務の責任)を「成果の大きさ」「プロセス(Plan-Do-See、課題解決、人材育成など)」「専門知識」等の観点から等級毎に大まかに定義することになります。さらに、職種毎の職責を明確にするために職種別役割定義書を作成することもあります。
・役割定義書は、全社的な透明性・公平性を保ちながら、定められた役割を達成するために何をすればいいのかを社員自らに考えがさせることを促し、社員の創意工夫やチャレンジを引き出すことにつなげることができます。
・役割定義書は、社員のキャリア形成の役に立つものにもなります。この点は全社共通の役割定義という発想がない職務等級と一線を画しています。
■管理職用の役割定義書(ある企業の例)
■非管理職用の役割定義書(ある企業の例)
・育成は、期末には本人の強み・弱みを棚卸しして、今後のキャリアを考える機会を設ける会社もあります。
役割定義書や個人の目標管理をもとに、日々の実務でフィードバックすることを重視している会社もあります。
役割定義書をもとに、等級毎の研修プログラムを整理する会社もあります。
・評価は、目標管理制度を利用して行うことが多いといえます。期首に、役割にふさわしいチャレンジと創意工夫を含んだ目標を社員自らが設定し、上司と合意形成し、期末に評価するというプロセスを踏むことになります。つまり具体的な仕事に落とし込むところが「柔軟」な運用になっています。
・この柔軟性はくせもので、本来の役割を担っていない可能性もあります。また、定型的な仕事が多いにもかかわらず、無理に目標管理制度を使って全社員を評価する企業も多くあります。
・給与は、役割と給与の乖離を解消するため、各種給与・手当を統合して、「役割給」に一本化する会社もあります。その場合、役割給は、等級毎の範囲給にすることが多いといえます。他方で役割給は給与全体の一部にすぎず、職能給と併用をしている会社も多くあります。
・昇給は、評価結果に応じてメリハリをつけることが多いといえます。さらに、低い評価を取れば降給することもあります。
・賞与は、評価結果に応じて従来よりメリハリをつけることが多いといえます。
次回は多くの日本企業に導入されてきた「職能資格制度」、「職務等級制度」と「役割等級制度」の比較について解説をいたします。