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職務等級制度

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職務等級制度

職務等級制度は、組織の中の各ポジションに適用される職務記述書があることを前提に、社員が就くポジションの価値に基づき等級が決まり、社員の仕事の結果を評価し、報酬を決める人事制度である。この制度は、欧米のジョブ型雇用システムの根幹を支えている。欧米では、人種、性別、年齢などによる差別を厳しく禁じている国が多いため、待遇の差を設けるために、社員が就く職務の責任範囲とその価値で説明する必要があった。つまり、法律の観点からも、仕事基準の人事制度をしっかり整える必要があった。

組織構造

図に、職務等級制度における組織構造と人材の配置に関する考え方を示した。まず上司は組織目標の達成や通常業務を行うために必要な組織構造と具体的な役割分担を検討し、必要なポジションの数と各ポジションに期待する仕事の内容を定める。組織構造と役割分担の設計は上司が全く自由にやるというよりも、仕事の内容・責任、等級などが定められた「職務記述書」である程度標準化されている。  効果的かつ効率的な組織にするために、総ポジション数や管理職のポジション数、等級毎のポジション数などの定数管理が行われ、総人件費がコントロールされる。結果として、無駄な階層・ポジションは排除される傾向にある。新卒一括採用の日本では難しいが、中途採用が基本である欧米ではそのようなコントロールがし易い。また、退職によりひとの入れ替えが進むので、組織の新陳代謝を図りやすい。  各ポジションには、社内リソースを中心に能力に基づき配置される。社員にそのポジションを担う能力があることが大前提となっており、社内に適切なひとがいなければ、外部から採用することになる。

 

等級

組織構造の中の各ポジションに対して仕事内容が最も近い職務記述書が選ばれ、職務記述書に定められた等級がそのポジションの価値となる。社員は、能力に基づき各ポジションに配置され、就いたポジションの等級が社員の等級になる。

 図で、ポジションと職務記述書の関係を詳しく説明したい。営業課長が、組織目標を達成するための役割分担を検討し、自分の下に3人分の営業担当のポジションを作っている。各ポジションには、仕事内容と責任が近い職務記述書が選ばれ、そのポジションに就いた社員の等級は適用される職務記述書から決まる。つまり、先にポジションがありその価値が等級として決まり、個人の等級は就いたポジションで決まるという順番になる。

 なお、職務記述書の価値は、そこに書かれている仕事内容・責任をポジション・サイズ測定などの手法で点数化し、点数をいくつかの段階に区分して等級で表わすことになる。

図は医療機器会社のミドル営業の職務記述書の例である。ミドル営業は、等級がS2(スタッフ2)で、仕事内容と責任、資格要件などが記述されている。この職務記述書には、最終的な成果として、売上総利益、顧客ロイヤリティ、シェアなどが記載されているが、具体的な数値目標までは定めていない。また、新規顧客をどの程度獲得すればよいのか、医師向けの教育活動を何回実施するべきかなども書かれていない。それらは、目標管理の中で評価対象期間の終わりまでにどこまで達成すべきかを決めることになる。

 この職務記述書の分量に注意してほしい。弊社はたくさんの会社の職務記述書を見てきたが、多くはこの例にあるようにA4一枚に納まる程度の分量である。運用も、そのポジション(ひとりのひとが担当する仕事の固まり)を少なくとも50%以上カバーする職務記述書があればよい。

 既存の職務記述書がうまく当てはまらなければ、組織構造と役割分担を分析し直し、新たに職務記述書を作成し、仕事の内容と責任を定める。そして組織構造と役割分担の標準化が進むことになる。

 すべてのポジションに対して職務記述書を作成すると莫大な量になるので、組織構造と役割分担の状況を分析して、具体的な仕事の内容と責任をある程度カテゴライズ・標準化しながら、整理している。組織構造と役割分担が属人的になっている日本では、このカテゴライズと標準化がなかなか難しい作業となる。

 等級の数には、注意が必要である。ポジション・サイズ測定の結果の点数を細かく分ければ、等級を細かく分けることが可能となり、等級毎に細かく給与水準を設定することができる。実際、欧米では長い間、「ナローバンド」と呼ばれる細分化された等級に狭い給与レンジを設定してきた。しかし、ナローバンドを維持・管理していくことは会社に取って大きな負担であり、ナローバンドのために外部からの採用、内部での異動・再配置が困難になるなどの問題が生じてきた。そのため、30年ぐらい前から複数の等級を統合し、広い給与レンジを設定するブロードバンドと呼ばれる手法を多くの会社が取るようになった。実際、グローバル企業であったとしても、ホワイトカラーの非管理職の等級は3~5つ、課長から部長・本部長クラスまでの管理職の等級は3~5つに集約されている。また、ブルーカラーの等級も3~5つに集約されている。

 

評価

成果評価は目標管理による評価を、行動評価は各社が選んだ重要なコンピテンシーによる評価を、絶対評価で実施することが多い。さらに成果と行動を合わせた総合評価をある組織単位で、相対評価で決めることが多い。具体的な内容は、役割等級制度のものに近い。但し、個々の評価項目を点数化し平均点を出したり、総合評価のために成果と行動の点数を合わせた合計点を出したりなど、点数を積み上げていくようなやり方をしている会社は少ない。

 

報酬

標準年収は等級毎・職種毎の市場データに基づき会社が決める。標準年収は、月々の職務給と標準賞与(職務給のxか月分)からなる。非管理職には残業時間に応じて残業代も支払われる。但し、米国などでは、Exemptにあたる職務では残業代は支払われない。

 職務給は、等級別に給与レンジ(範囲給)の中で決定される。個人の職務給は、給与レンジの下限以上の金額で設定され、相対評価の結果に応じて評価昇給(Merit Increase)することで給与レンジの中を上がっていき、上限の金額まで昇給できる。個人の賞与は、相対評価の結果や会社業績に応じて支給される。

 具体的な内容は、役割等級制度の内容が近いので、そちらを参照してほしい。但し、欧米では、年次の評価で昇給することはあるが、降給するようなことはほぼない。

図解
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