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チェンジマネジメント

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チェンジマネジメント

管理職の意識が変わると、会社が変わる

C社は、約60年前から創業している大手IT系企業の子会社である。従業員数は約200名。そのうち、管理職は20名ほどを占めている。 C社の経営者が抱える悩みは、業務への貢献以上に給与をもらっている管理職者層が多いといういことだ。数年前から彼らの働き方を変えるべく、人事制度を変える試みを行ってきた。しかし、「働かない管理職」はC社の企業体質と呼べるほど定着しており、社内でこの問題に向き合える者は誰もいなかった。

「弊社では数年前、人事制度の見直しを行いました。約1年間かけて、精度の高い人事制度を作ったのですが、結局、社内でその制度を定着させることができませんでした。定着できなかった理由としては、弊社の管理職の存在が大きいと思います。
彼らは、社員や労組、経営者の顔色ばかりうかがい、大きな変化を決断できません。自分の保身にばかりに目が行きがちで、変革がもたらすリスクに立ち向かおうとはしません。自らリスクを取り会社を良くしようという考え方ができないのです。」

5年前、本社からの出向でC社の社長に就任したJ社長は、その様な管理職の存在に頭を抱えていた。

「弊社では、一日も早く新しい人事制度を導入したいと考えています。これまでの年功序列の職能資格制度のままでは、管理職層が腐ってしまう。そして、その部下、更には社員全体に悪影響を与えることが目に見えています。そんな状態では、企業間の競争を生き抜くことはできません。大企業の子会社だからといって、決して安泰ではない経営状況なのです。しかし、管理職は弊社の置かれている状況について見て見ぬふりをしています。彼らの意識を変え、新しい制度を定着させることは出来ないでしょうか?」

以上のJ社長の話から、弊社はC社管理職の実態を掴むべく、管理職一人一人と面談をし、彼らが抱える問題は何かを特定することにした。

【管理職との面談】
約1か月かけて、数十人の管理職やその部下と面談を重ねた。以下は、インタビューの一部を抜粋したものである。

・「今の会社に問題がないとは言えません。その理由は、特に管理職層に危機感を持っていない人が目立つためです。業績が落ちている訳ではないので、結果だけ見ていると安心してしまいがちなのですが、このままこの状況が続くとは思っていません。」
・「弊社は、控えめで自己主張しない人が多い。結果が悪くても、責任追及がなく、良く言えばやさしい会社です。悪く言えば、上司の言うことに皆従っているだけのようにも見えます。」
・「利他の精神をもってほしいが、企業体質的に諦めています。上司や先輩たちがそのような自身の保身を考えてきていたので、自分のその文化が身についています。」
・「ある特定の管理職が、人事制度を変えることに対して非常に抵抗があるように感じています。非常に影響力のある立場にいるので、その人が変われば会社も変わるのではないかと思っています。」

 彼らの話を統合していくと、企業風土が保守的で管理職に危機感がないことが判明した。また、管理職の中でも、特に上位クラスにキーマンとなる人物がいることも分かった。我々は、そのキーマンとなる人物を変えることで会社全体が変わるのではないかとの仮説を立て、その人物をチェンジマネジメントの中心人物とすることにした。

【キーマンとなる人物について】
キーマンとなる人物は、Eさん。入社33年目、55歳の男性である。新卒から入社し、C社にて企画系の職種を経験、8年前から総務部の部長を任されている。
非常に保守的なC社の企業体質に染まり、リスクを取るような決断は行わない。仕事は、部下のマネジメントと称して毎日ルーティンワークしか行わず、定時には帰宅する。退職まであと5年。自分の能力を会社に生かすというよりも、安泰に定年退職を迎えることのみ考えている。リスクを背負うことを極端に嫌う傾向があり、心配性である。

「会社の経営が親会社頼みになってしまっている今、新たな人事制度を導入しないと経営を建て直せないことは理解しています。ただ、新しい人事制度は、役割によって職務を決めるため、不利益変更と言わざるを得ない事態が起こります。弊社社員は、長年年功序列の職務主義に慣れています。そんな企業体質下で、不利益変更もあり得る成果主義を導入したら、社員や労組にどのように反発されるかが目に見えています。そんなドラスティックな変革は、うちの会社では正直無理だと思っています。」

上記のようなEさんの懸念点を解消すべく、弊社では以下のようにサポートした。

【チェンジマネジメント1】
■徹底的なリーガルチェックと給与体系のシュミュレーション
 弊社の紹介で、労働法に詳しい弁護士を紹介し、Eさんと一緒にその弁護士のもとに週1回、約3か月の間足を運んだ。その際、Eさんと事前に質問項目を確認し、Eさんが抱えている疑問を整理しながら一緒に解消していった。
Eさんの一番の不安は、新しい人事制度を導入することによる給与体系の変化で、主に不利益変更にならないかという点にあった。その点について、弁護士に相談し、徹底的なリーガルチェックを行った。
また、新制度導入後の給与シュミュレーションも徹底して行い、法律的に何も問題がないことをはっきりとさせた。

【チェンジマネジメント2】
■定例ミーティングとマイルストーンの設定
徹底したリーガルチェックや給与体系のシュミュレーション、制度導入の基本的なスケジュールを示した後で、Eさんが具体的に何を行い、関係部署にどのような影響を与えれば良いかについて、弊社でマイルストーンを作った。
他の管理職への説明をどのようにするか、新たな目標管理制度の運用はどのようなタイミングで行うか、ソフトランディングの期間をどれくらいに設定し、関係者にどのように働きかければ良いかについて、週に1度ミーティングを約半年間開いてアドバイスを行った。
30年以上同じ会社にいて、これまで慣れてきた制度を変えたくないという気持ちは、きっとEさんが一番強く持っているであろう。これまでの安泰な生活を手放すのだから、不安は計り知れない。事実、先週はやる気があったのに今週はまた元の保守的なEさんに戻ってしまうという事が何度もあった。
そんなEさんの気持ちを汲みながら、初めの大きな一歩をEさんに寄り添うように一緒に歩んであげる。次に踏み出す一歩を示しながら、一人でも新しい取り組みができるように徐々に手を放していく。これが弊社のチェンジマネジメントの肝である。

【チェンジマネジメント3】
■いつでも相談できる状態を作っておく
Eさんが一人でも関係者を巻き込みながら調整できてきていると感じたら、弊社は伴走者ではなく完全なコーチとなる。弊社では、労務の専門的な知識を持ち合わせているので、何か懸念点があればいつでも相談できるような環境を作り、安心して制度の導入を行ってもらう。マイルストーン通りに進んでいないと感じたら、弊社がEさんに会いに行き、直接問題を特定しながら一歩ずつ解消していく。
このようなサポートを1年近く行った結果、Eさんが率先して会社を変えられるまでに至った。

【チェンジマネジメント後のEさんの感想】
「初めてCC社のコンサルタントとお話した時、成果主義への変更は一部の外資系のみで上手くいっている制度だと思っていたので、弊社での導入・定着は無理だと思っていました。制度を作った当初も、この制度の重要性は分かっていたものの、現実的ではないと思っていたのです。
しかし、成果主義の本当の意味や、現在弊社が置かれている状況、このままでは管理職が機能しなくなりゆくゆくは社員の士気が低下するなどの問題を目の当たりにし、変えていくしかないと思いました。
現在は、弊社の変化に倣って、親会社でも成果主義に変更していく流れが生まれています。制度を導入した今は、この変化が正しいことであり、自分がこの数年で奔走したことは非常に意義があったことであると実感しています。そして何より、今回の一件で自分が『変われた』ことはとても嬉しいことでした。また、自分が変わることで周りも変わってくれるのだということが分かりました。いくつになっても成長できるんですね。このような機会を与えていただいたことに感謝したいです。」

 

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