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目標管理制度の再考~働き方改革の根本課題

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目標管理制度の再考~働き方改革の根本課題
コンピテンシーコンサルティング株式会社
代表取締役社長 浜田正憲


働き方改革は、労働時間の厳格な管理体制、裁量労働や時間外手当の前払いなど様々な「手段」で語られることが多い。

しかし、時間あたりの労働生産性を上げるという本来の目的に戻れば、目標管理、特に組織の方向性を定める管理職の目標管理の質の向上が、根本課題ではないか。

2013年の労務行政研究所の調査によれば企業の81.3%が目標管理制度を導入している。社員の目標を定め、その達成度を測る人事評価手法として定着している。私は、長きに渡り目標管理の運用に携わってきたが、管理職が作成する「目標管理シート」には問題が多い。

まず、部下に丸投げするようなものが多い。上位と同じような目標を羅列するだけで、組織の課題や解決のための工夫に踏み込めていない。人事部門が作成を求めた目標管理シート上だけでなく、組織の運営方針を聞いても踏み込めていないことが多い。結果、目標は部下に丸投げされる。部下の検討範囲は著しく広がってしまうことになる。

働き方改革で時短を部下に丸投げするいわゆる働き方ハラスメントも早速問題になっている。他方、目標過多のものもある。優先順位を付けずにいくつもの表層的な問題を取り上げ、色々な手段を部下に求めている。

目標設定をするときには、「問題分析」「課題解決」のスキルが欠かせない。現実と理想の間にあるさまざまな問題を認識し、問題の原因を追究し、特に優先順位が高い問題、言い換えれば「課題」を特定し、解決のための最適な手段を選択するという一連の流れを解説するセミナーや書籍はいくつもある。しかし、これらのスキルは、実務の中で思考の発散と収束を繰り返しながら、成功と失敗を繰り返しながら獲得するしかない。

管理職は、勇気を持って課題を特定することが自らの存在意義であり、組織の効果性・効率性を高めることになることをしっかり意識してもらいたい。プレーイングマネージャという名のもと目の前の業務に忙殺される管理職では、働き方改革に未来はない。

経営層には、経営環境や自社の組織能力を基に五分五分で達成できる財務目標を立て、それを達成するための手段に優先順位をつけること、部下である管理職に存在意義を問いかけ、組織目標を達成するために優先順位をつけるように日々指導していくこと、そして実行と結果を検証していく経営プロセスを構築することが求められる。

人事部門には、事業部門と協力し目標管理に必要なスキル教育を充実させるだけでなく、管理職が作成した目標管理シートの質に踏み込む勇気が求められる。そのためには、経営を理解し、経営から人事機能が遊離しないように不断の努力が必要となる。
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